No pain, no gain.
英語、ことわざ10選-9. No pain, no gain. < 英語、ことわざ10選 < HOME
いつかどこかで誰かが言った表現的巧みで印象を刻んだ知恵のことば、人から人へ伝染し、土地から土地に伝播し、時代から時代へと伝承した、よみ人知らずの名言、この諺(ことわざ)なるものを選んで「英語、ことわざ10選」、その表現テクニックを今は伝授するといたしましょう。
English sayings speak volumes about life and English.
No pain, no gain.
(まかぬ種は生えぬ)
After good exercise, you may be reminded of the proverb: “No pain, no gain.” In that case, a little bit painful muscles and joints are a joyful reminder of your mind and body recharged, your health promoted. Among other things, those lessons which you have learned the hard way are gains for your pains. Only pains with no gains remain a pain in the neck.
(うんと運動した後、諺のNo pain, no gain.を思い出すかもしれませんね。そうならちょっぴり痛い筋肉と関節も活力を回復した心身、増進した健康を思って喜べるというもの。わけても、えらい目をして学んだ知恵は苦労のかいあっての収穫。ただし、全くの徒労は頭痛の種を残すだけですね)
| [問1] | 以下4語の諺に使われている4つの表現テクニックを挙げなさい。 |
英文が書けるためには文法力という英語をかみ砕く歯が必要、英文がうまく書けるためには英文のうまいへたがよくわかる、つまり表現レベルで英語を賞味できる舌が必要――あなたは英語とおいしく付き合っていますか。英語が母語(mother tongue)並のバイリンガルになるためには「舌」が必要ですよ。英語のハイテク=表現テクニックは英語の料理法――この料理法を習得するプロセスの中で「舌」ができてきますが、同時に「歯」もぐんと丈夫になりますよ、英語の文法と技法は奥で通じていますから。
「英語、ことわざ10選」は英語の表現テクニックを伝授する初の無料講座で「英語オンライン講座ハイテク英語第1道場」は技法を実用の技として指南する初の有料講座、それ以前はライティングのテクニックと言えば、パラグラフの構成法、トピックセンテンスの活用、リンキング(linking)程度のことでお茶を濁してきました。確かに文章の組み立て方も大切ですが、各パラグラフを構成する文自体が拙ければ、内容がどうあれ、読む気をそいでしまう無価値な文章になってしまいます。この講座と出会うまで「表現テクニック」なる用語に出会うことさえなかったあなたは、英語の一人前は表現テクニックを駆使して英語を料理する、半人前は「料理法」を学んでいない、ということさえ思い当たらなかったわけですが、ここらで、No pain, no gain.4語の4テクニックで、表現テクニックなる「英語の料理法」の真価に目覚めて欲しいものです。英語の諺は人生と英語を大いに語る――簡潔の極みNo pain, no gain.は英語を極めるのに何が必要か、雄弁に語っています。
[答]
4つのテクニックの中で少しなじみなのは韻、「英語、ことわざ10選-3 Hear no evil, see no evil, speak no evil.」で少し触れたparataxis(並列)はネイティブもなじみのない用語、ですが並列構造をよく使いますし、プロのライターなら巧みな並列の1文はパラグラフ全体を引き立てる主役を演じることのできる表現テクニックと心得ています。「体言止め」とはもちろん英語の体言止めで動詞との位置関係は日本語の体言止めと逆、「noの強調反復」同様私の命名です。
1. 韻
意味を変えずに形態を変えるのは変形(transformation)、意味を変えずに表現を魅力的にするのは表現テクニック――同じ趣意のa.、b.のa.がb.より魅力的なのは[pein][gein]の韻の力、換言すれば音を表現テクニックとするa.はb.ほど「おと」なしい文でないということ。韻と言えるほどぴったり音が揃わなくても、語頭(第1音節)「ef」、語末「t」でスペルの揃ったeffort、effectのc.のほうがb.よりやはりeffectiveでattractiveということになりますね。
cross(十字架/試練)、crown(王冠/栄冠)が頭韻 (alliteration:狭義では同じ語頭の子音[consonant]を持つ複数の単語が近接、隣接していること、広義では母音[vowel]も含める)を踏むd.はa.と同じ趣意ながら苦労の程度も得るもののレベルもぐんと高くなっています。
cが大文字のthe Crossは「イエスの受難」、試練の程度も、栄冠のレベルもぐんと高くなってclimaxに至ると、
となりますが、pain → cross → Crossと苦難が大きくなり、gain → crown → Christと得るものも神々しくなると気安く使える表現ではなくなりますから、e.が諺になるのはいばらの道。
No pain, no gain.にはその複数形pains、gainsのf.のバリエーションもあると言うより、本来「苦労/骨折り」の意味では複数形pains、「利益」の意味では複数形gainsが基本ですから、文法レベルではf.が基本でNo pain, no gainはf.の表現的展開になります。pain[pein]、gain[gein]のほうがpains[peinz]、gains[geins]より音がよくて表情もすっきりしている、pains、gainsは少々野暮――というあたりでNo pain, no gain.がより好まれるという次第。
| [問2] | あなたなら以下2つのキャッチコピーのどちらを買うか。 |
「どちらも買わない」なんてつれないことを言わないでくださいよ。これは「英語オンライン講座 ハイテク英語第1道場」のキャッチコピーで買っていただく必要はないのですが、あなたはg.、h.のどちらを高く評価しますか。どちらと言っても違いは1語だけ、使役動詞letかmakeかの取捨選択にとことんこだわらなくてはならなくなるところに「表現レベルの英語」の奥を垣間見ることになりますよ。
letを取る:
makeを取る:
第2文と第3文を直結するのは文末wingと文頭swingのパワフルな韻――漸層法(climax)の1タイプに漸増反復(incremental repetition: 各連(stanza)で先行する連の一部を少しバリエーションをつけて繰り返す手法)と呼ぶ詩の技法がありますが、このテクニックは韻文(verse)だけでなく散文(prose)にも応用できるもので、文末wingに「s」プラスで語気を強めた文頭swingで2文を連動させる第2文から第3文の展開も一種の漸増反復。wind(風) → whirlwind(つむじ風)と意味的にも形態的にも強まったwhirlwindで「wind」を反復する以下の諺も見つかります。
文は気を呼吸する有機体、他から切り離したletとmakeだけの二者択一なら迷わずletを取りますが、makeの1.〜3.プラス「比喩」プラス「漸増反復」で第1文から第3文まで強く気の通った完全な統一体となるh.のほうがキャッチコピーとして売り、私はmakeを買うことにしましたが、あなたならg.とh.のどちらを買いますか。
このキャッチコピーを引き立てるもう1つの表現テクニックは私が「体言止め」と呼んでいる英語の体言止め――j.のIt is省略で名詞timeが文頭に立ち表現が簡潔で力強くなるだけでなく、第1文の頭のAimと第2文の頭のTimeのスリリングなスペリングの呼応で2文の文脈に精気が通り、両方ともに活気づきますね。k.とl.は同じ文で同じでない、2文を縦に並べるとAim、Timeの「-im-」が目を打ち表現のインパクトが強まる――同じ2文を横に並べるのと縦に並べるのでは表現力が変わってくるあたりはキャッチコピーならでは。
キャッチコピーなるものが誕生するずっと昔から諺は生き続けてきましたが、表現技法を活用して印象を造るというエッセンスは同じ、「真の友情」を売り込むキャッチコピーということになればA friend in need is a friend indeed.(まさかのときの友が真の友)の右に出るコピーはないでしょうね。わずかの語数で英語のすばらしさを大いに語る英語の諺は「英語」のキャッチコピー、と言えるかも。
2. noの強調反復
「noの強調反復」に立ち入る前に、反復しなくともそれ自体で自己主張の強い、表現力のある、文法と技法の両レベルで顔の利くnoの素顔を立ち止まって確認する必要がありますね。しかしその前に、英語の否定構文(negative construction)という表現テクニックのお花畑にちょっと立ち寄る必要もありますね。
| [問3] | 以下の3文が同義となるように空所に適語を1語補いなさい。n.、o.の空所に入る語はそれぞれ2つある。 |
「not any=no」のイコール関係からすると、n.の空所に入るのは「否定の副詞+any=almost no」のイコール関係になる否定の副詞――語尾「-ly」の否定の副詞barely、hardly、rarely、scarcelyの仲間外れはseldomと同義のrarely(めったに…しない)、ですからp.は誤りです。
p.は意味的に誤っているということでrarely anyは非文法ということではありませんよ。念のため、以下の2文で意味の違いを確認しておきましょう。
「ほとんど…ない」の3副詞barely、hardly、scarcelyの用法に関し、以下はLongman Dictionary of Contemporary Englishの解説の一部です。
Hardly and scarcely (but not barely) can be followed by any, ever, and at all...
(hardlyとscarcely[しかしbarelyは不可]の後にはany、ever、at allがきてもよい)
この指示に従えばn.の空所に入るのはhardlyとscarcely。
| n1. | There is hardly any chance of an early settlement. |
| n3. | There is scarcely any chance of an early settlement. |
ですが経験的に言わせてもらえば、barely anyは全く普通、なぜbarelyとanyを結びつけてはいけないのかきちんと筋の通った説明がなければ承服しかねますね。規範文法(normative grammar)や学校文法(school grammar)では石頭の文法家が「これはいけない、これもいけない」と文法を交通規則のように教えがちですが、いちいち真に受けていると現実と正面衝突しかねません。現実はどうか――Googleで検索してみますと、hardly anyが最も一般的、scarcely anyはbarely any(60万件以上)よりやや優勢、と言うところ、しかしany chanceとの組合せではbarely any chanceはhardly any chanceと全く互角、scarcely any chanceはかなりの少数派、という結果が出ました。現実派でいくなら、hardlyとbarelyがお勧め。
| n1. | There is hardly any chance of an early settlement. |
| n2. | There is barely any chance of an early settlement. |
| [問4] | barely any chanceがscarcely any chanceよりずっと好まれるのはなぜだと思うか。 |
私の英語感覚では、これは私がABC効果(語頭がアルファベット順になる数語の連続、あるいはアルファベット順になる複数の単語がアルファベット順でなく並ぶことによって生じる音響効果)と呼んでいるものでしょうね。音にうるさい英語のネイティブは音にこだわる――英語的音感のない方を私は「英語音痴」と呼んでいます。
| [答] | ABC効果: anyの語頭A、barelyのB、chanceのCがBACと並んで音響よし。 |
o.の空所に入るのはlittleとnext――まずlittle、次にnextの順で説明しましょう。littleにveryをつけたvery little chanceのs.はm.と同義、
very little chanceとストレートに表現せず少し「ひねり」を加え、little chanceとno chanceを組み合わせたlittle or no chanceもalmost no chanceの意、
little or no chanceをさらに「ひねる」とlittle to no chance――このtoはfrom A to B(AからBまで)のfrom脱落でA to Bとなったtoで、例えばpeople aged from 25 to 40(25歳から40歳の人たち) → people aged 25 to 40と表現が簡潔化しますが、同様にfrom little (chance) to no chance → little to no chance。
| o1. | There is little to no chance of an early settlement. |
from脱落のA to Bは広く応用される表現形式でu.のLight to moderate exerciseもその一例です。
next to=almostのnext to はイディオム化していますから本来前置詞であるnext toのtoの後に形容詞がくることも可能、next to perfect(ほぼ完璧)、next to meaningless(ほとんど無意味)でnext to being perfect、next to being meaninglessと動名詞beingの介在は不要です。next toが否定語を伴う「next to no +名詞」「next to nothing」はイディオムnext to(ほとんど)の中心的用法。
next to=almostと意味的にイコール関係でも表現的にイコールでないからalmostの代わりにnext toを使うわけですね。同じ意味の異なる表現が意味することがよくわかるようになるまでは英語はよくわからないのです。以下の2文は同義といえども随分表情は違いますね。
| [問5] | 「100メートル競走決勝で息子はびりから2番目だった」の意味になるよう、以下の空所に適語を1語ずつ補いなさい。 |
「びりから2番目」はthe one before the last oneですが、3語で済ませるうまい表現が2つありますよ。
[答]
| y1. | My son came last but one in the 100-meter dash final. |
| y2. | My son came next to last in the 100-meter dash final. |
almost no chanceならalmostはnoにalmostの意味を加えただけですが、next to no chanceならnoにalmost の意味とnoを引き立てる表現的アクセントの両方を加えたことになります。
[問3の答]
| n1. | There is hardly any chance of an early settlement. |
| n2. | There is barely any chance of an early settlement. |
| o1. | There is little to no chance of an early settlement. |
| o2. | There is next to no chance of an early settlement. |
| [問6] | 以下の文の従属節(when you are no longer subject to prejudice)を変形的処理で表現を強めかつ魅力的にしなさい。 |
「変形的処理」とはwhen節を分詞構文(participial construction)に変えること、「表現を強め魅力的」にするとは、文頭の強調の位置にnoやnotを配置しインパクトのある表現に変えることです。z.を分詞構文化するとaa.になりますが、Beingの省略でno longerを文頭に立てるか、いったんz.をab.に変形した上で分詞構文(ac.)、次にbeing省略で表現を簡潔化します。
[答]
noの巧みな反復は即座に印象を刻みますが、この「巧み」の典型は文の強調の座(文頭·文末)でnoを反復する「noの強調反復」テクニック――この点を以下3文で例証してみましょう。
there is構文2節の主語でnoを反復したaf.、主節のThere is省略で、文頭·文末でnoを強調反復したag.とneither...norでnoを2つとも使わないah.を比較すれば、noの反復はそれ自体が表現力と即座に納得できるでしょう。ところでnoの反復テクニックの典型である「noの強調反復」の典型、つまり究極の「noの強調反復」はどういう表現形式になるかわかりますか。それは、1文に文頭と文末しかない、つまり1文が2つの名詞句で構成され、その2つの名詞句の先頭は各noという究極的に簡潔な表現形式になりますね。そういう1文を例示すれば、文頭No pain、文末no gain、2名詞句(no pain、no gain)1文構成の例の
ですからこの諺はnoの強調反復の典型と言えるわけです。
noの巧みな反復には「noの強調反復」の他にnoを頭にした2つ以上の語句を連ねる「noの連続反復」テクニックもあります。for no reasonだけのai.よりfor no reason, for no specific reason、for no reason, for no purposeと連続したaj.、ak.のほうが説得力がありますね。
| [問7] | 以下の文を英訳しなさい。 |
全く努力しないことに言訳は通用しない。
You cannot excuse yourself for not making any effort.で済ませずに、noの反復テクニックで3通りに訳してみると、
[答]
同じnoの反復でもam.のようにno excuseとno effortに間髪を入れずno excuse for no effortとnoを連続反復すれば、表現がぐんと勢いづきます。さらにThere is省略でNo excuse for no effortとnoを前面に押し出せば、文頭No excuse、文末no effortの強調反復と言うより、名詞句No excuse for no effortが文頭かつ文末という最強の「noの強調反復」――an.は「noの連続反復」プラス「noの強調反復」でnoの2つの反復テクニックの結晶ですが、この「プラス」、つまり「noの連続反復」から「noの強調反復」への展開は私が「英語の体言止め」と呼ぶもう1つの表現テクニックを介在して結実したもの。
3. 体言止め
「他人行儀にする必要はありません」を「他人行儀は不要」と名詞「不要」で文を終われば「体言止め」、英語なら以下。
日本語の体言止めは文のまさに最後の語句が名詞でその後に動詞が省略された形ですが、「英語の体言止め」は文の最後の文の要素(element of the sentence)が名詞句(ap.では主語)でその前の動詞までの語句(ap.ではThere is)を省略した形で、文末の名詞句(ap.ではNo need to stand on ceremony)だけが残った形態になります。英語の体言止めの典型は以下の2タイプ。
1.のタイプでは主語が残り、2.のタイプで残るのは補語ですが、お馴染みの口語表現No problem.(いいとも、どういたしまして、大丈夫)は主語ととっても補語ととっても問題なし。
同義である2構文「It is no use+〜ing」(…してもむだである) = 「There is no use+〜ing」を体言止めにすると同一形「No use+〜ing」になりますが、これを主語、補語の1つに決めようとしてもむだですよ。
| [問8] | 諺No pain, no gain.に文構造を与えなさい。 |
換言すれば「No pain、no gainの文の要素は何」ということです。
No pain, no gainを諺「まかぬ種は生えぬ」に当てなければ「苦労がなければ利益もなし」と訳すのが一般的、これでいけばif節の従属節と主節の2節がthere is構文仕立てのba.になります。
しかしこれよりぐんと上質な、there is構文を重ねる高級構文を「英語、ことわざ10選-8」で学習しましたね。
この構文に当てるとno pain、no gainがthere is構文2節の文末という「noの強調反復」のad.、さらに体言止めで従属節Where there's、主節there'sを省略するとNo painの直後にno gainとくる「noの連続反復」テクニック――「noの強調反復」→「体言止め」→「noの連続反復」とテクニックの連続技で決めたのが諺No pain, no gain.なのです。ちなみにWhere there's a will, there's a way.を体言止めでbb.→bc.と技をかけても、表現は決まりませんね、否定語noが前面に出てこそ迫力が出るというもの。
[答]
「No A, no B.(AなくばBなし、AのないところにBなし)のイディオムをひとつ紹介しましょう。
これはバスケットボール起源の表現で、ルール違反のプレーでも試合に得点的影響がなければfoul(反則)としないという意味が転じて、一般にNo damage, no problem(被害なければ問題なし)、No damage, no punishment.(被害なければ処罰なし)の意味で使われるようになったものです。
「英語の体言止め」というテクニックにも英語らしい豊かな独創力が大小様々な表現の花を咲かせています。その中から3つばかり摘み取ってお見せしましょう。
| [問9] | 以下の文を英訳しなさい。 |
不正と妥協しないこと。悪行を見逃さないこと。
まず英訳文の解釈ですが、これは「要するに不正と妥協しないことである」「悪行を見逃さないことは言うまでもない」の『不正と妥協しないこと』『悪行を見逃さないこと』ではなく、日本語の体言止め命令で「不正と妥協すべからず。悪行を見逃すべからず」の意味ですね。英語にも体言止め命令が、それも2タイプあることをご存知ですか。
NoN型かNoG型かの選択は表現的好みと表現感覚·効果の問題ですが、動詞と同形あるいは派生の名詞がない場合(例えば動詞overlook)は選択の余地なくNoG型になります。
bf.は普通の否定命令文、bg.は禁止の意を表す否定文――bg.2つのThere must beを省略すれば、NoN型(No compromise with wrongdoing.)、NoG型(No overlooking misdeeds.)の体言止め否定命令文がそれぞれ生成します。
[答]
| [問10] | 次の英文はどこが変か。 |
「猫踏んじゃった、猫踏んじゃった」という歌詞はあっても、Step on no pets.は一風変わった意味ですね。それともペットを踏みつけるchild abuse(児童虐待)ならぬpet abuse(ペット虐待)という変な社会現象もあるのでしょうか。眠っている犬をうっかり踏みつけたらどうなる、Step on no pets.の真意は例の諺に通じているのでは、とあなたは考え直すかも。
Read “pets” and “no” backward, and you'll get “step” and “on” respectively.(petsとnoを逆に読めばstepとon)――と言うことは全文をスペルアウトすると左右対称の
s-t-e-p-o-n-n-o-p-e-t-s
となって、Step on no pet.は怪しい文になりますが、これは怪文と言わずに回文(palindrome)と言っていますね。あちらにも「竹藪焼けた(たけやぶやけた)」のファンがいるのですね。変なことに妙に興味を感じるのは人間の性でしょうか。
それにしましてもStep on no pets.はやはり変な英語ですね、文法レベルで。否定命令文(negative imperative sentence)は文頭Don't、Neverで始まるもの、非文法ではないもののnoで否定命令のbi.は「異文法」。
[答]
否定文ではYou must not step on any pets.でもYou must step on no pets.でもよいが、否定の命令文ではDon't step on any pets.でStep on no pets.は変。
回文まで持ち出して話しは少々持って回りましたが、文頭Noの体言止め否定命令文の持ち味を賞味していただけたのでは。
A or no A型は強調的な譲歩表現、以下2文を比較してみましょう。
bn.、bo.はそれぞれWhether we were、Whether it was省略でbp.→bn.、bq.→bo.と生成した形です。Whether it was luck or no luck,のitは主節(we won)を言及しています。
Whether it was省略でwhether節の補語luck or no luckを残す変形自体は体言止めですが、Luck or no luck=Whether it was luck or no luckの文法機能になりますからbo.のLuck or no luckは名詞句ではなく副詞句として機能しています。bn.、bo.2文の違いは「A or not」と「A or no A」の違い、つまりAを反復強調するか否かの違いになりますが、2度目のAにnoを冠して反復を加勢するところが「A or no A型」の味噌――Aより強く2つのA、notより強くno、「A or no A型」強調譲歩構文のきりっとした表現的切れ味は体言止めの持ち味ですね。
| [問11] | 以下の文を英訳しなさい。 |
抵抗がどうあれ、使命貫徹の決意は固い。
3通りに英訳しましょう。
br.のWhateverは疑問形容詞(interrogative adjective)、bs.のWhateverは疑問代名詞(interrogative pronoun)で文の要素は補語、the resistanceは主語、bs.は省略で従属節をきりっと簡潔化、外置(extraposition)変形で主節の体裁をよくしたレベルの高い文――the resistanceを限定する関係代名詞節(that) there will beと述部may beを省略、my determination to carry the mission throughからto不定詞句を分離し文末移動することでbs.はbu.から変形生成したものです。
bt.のResistance or no resistanceは譲歩節Whether there is resistance or no resistanceのWhether there is省略による「A or no A型」、省略によりthere is構文の主語を残す体言止めながらResistance or no resistance=Whether there is resistance or no resistanceのイコール関係でResistance or no resistanceは副詞句として機能します。体言止めの応用テクニックも様々、譲歩構文(concessive construction)も色々――英語は何をやらせても色々様々、本当にカラフルな表現技術で織りなすことばですね。
| [問12] | 以下の2節(passage)はTIMEとNewsweekの同日号からの引用、この2節に共通する表現テクニックを説明しなさい。 |
出典: TIME 2007年3月26日号 p21
出典: Newsweek 2007年3月26日号 p13
体言止め同格反復テクニックの登場――TIMEとNewsweekの同日号に顔見せしていますが、これが両誌での初顔合わせというのでも、皆さんにとって初対面というのでもない「おなじみ」の表現テクニック、ですが「英語の表現テクニック」自体の認識も評価もゼロに近い私たちの英語学習の現状では知られざる表現手法、その「手」をしらず、その「顔」に見覚えがないのも致し方ありませんね。
同じ体言止めの同格反復ですが、Newsweekからの1節(bw.)はTIMEの1節(bv.)より応用的――one room whose broken windows are stuffed with plastic shopping bagsと、ただのbroken windows(ガラスの割れた窓)でなく、stuffed with plastic shopping bags(ビニールの買い物袋を詰めた)とbroken windowsを描写し、単に「ベッドもない」でなく1文独立でThey sleep on a green plastic mat.(一家は緑のビニールマットの上で寝る)と記述しているため、表現形式が少々複雑化していますが、もし以下の1.、2.のように単純化するとTIMEの1節と全く同じ型通りの体言止め同格反復になります。
1.、2.の表現転換でbw.を全文書き換えると、コロンの直後がno unbroken windows、no bedsはno mattressesの前に配置、one roomを関係代名詞節that does not get more squalidが限定するbx.に変わります。
ここでbv.とbx.を比較すれば、それぞれのコロン以下に羅列した「no+名詞句」群がそれぞれの形容詞「clean, and quiet」「squalid」を具体的に補足説明する同格語として機能しているのは一目瞭然――bv.、bw.のコロン以下はby.、bz.のthere is、there areを省略する体言止めで生成したもの、コロン以下は強調の位置である文末、there is、there are省略で「no+名詞句」が連続、ですから「体言止め同格反復」は「noの強調反復」と「noの連続反復」テクニックを活用兼用したパワフルな表現手法、体言止め同格反復の表現的インパクトもこれで納得、ですね。
cleanとsqualidは反意語(antonym)――cleanとsqualidが象徴する生存の明暗のコントラストが興を添えた2節。さて、bv.、bw.のように「no+名詞句」がいくつも並んでいても、本テーマの諺(No pain, no gain.)のようにno painとno gainの2つだけでも、接続詞の「手」でつながない空手の技法は並列(parataxis)。
4. 並列
例えば“ライティング”の手引きとして定評のある『The Elements of Style』の中で並列に言及している部分はあってもparataxisという用語は一度も使われていない、例えば学習書に「andやorで並列した文や語句」なんて「並列」にあるまじき『並列』が説明文中に見つかる、という調子で「parataxis」も「並列」もいまだ陽の当たらない文法用語――されど卓越した表現技法として並列にスポットライトを当てたのは「英語オンライン講座 ハイテク英語第1道場」。並列という接続詞を介さないいわば「直列」を深く理解したい方には「第1道場」直行がお勧め、ここでは並列の興味深い応用形式を2つ紹介しますが、その前に単純な並列でも高度な並列でも並々ならぬ並列の表現的際立ちを確認しておきましょう。
各文2つの動詞句を等位接続詞(coordinate conjunction)andで結ぶと、並列の表現的cutting edgeは刃こぼれし、アピール力が半減した切れない鈍い文となり、諺もスローガンも死んでしまうcc.、cd.の結果になります。
cc.ならストレートに表現してce.といくほうが上手。
cb.のスローガンの趣意はcf.。
cd.ならcf.をスローガン風にアレンジしてcg.といくほうが受けますね。
太陽熱も風力もrenewable energy(再生可能なエネルギー)ですが、burnout(燃え尽き症候群)でsnap(プッツンする)にならないためには生活もrenewableの必要がありますね。Work hard, play hard.やNo pain, no gain.のように2語の動詞句2つ、2語の名詞句2つといった単純な形式だけが並列ではありません。ですが、鋭い構造感覚を要し、ストレートに感受性を打つ並列なる高等技法は、表現的切れがないと非文法に転落する、いわば文法上のタイトロープ(tightrope)――ネイティブ並の構造感覚ができ上がるまでは2〜4語の短い語句2構成の並の並列が無難。とは言え、賞味する分には並はずれな並列も異議なし。
| [問13] | 以下のパラグラフに「並」と「並はずれ」2つの並列が見つかる、吟味賞味しなさい。 |
出典: TIME 2007年3月12日号 p64
[解説]
そこだけを見ると「並の並列」も実は平凡な並列ではないのです。パラグラフの第1文に続くThe way Kitty Genovese's was stolen.をどう読解しますか、まずこの部分の構造展開、つまり変形を確認しておきましょう。
In the wayの前置詞in省略、関係副詞that省略、Genovese's lifeを独立所有格Genovese'sに置換――3つの省略変形でch.はci.から生成しますが、The way...stolen.全体も構造展開した後の姿、元の姿はcj.。
cj.のthe way以下を独立させることで、原文を各3語2動詞句仕立ての体裁の整った正常な並列に変えたわけですから、これは「並の並列」で「平凡な並列」ではありませんよ。「並外れの並列」とはck.の2つの動詞becameを省略し、andを除去して並列構造に発展させたものです。
ですから「並外れた並列」は3節構成の並列で、第1節6語(Her death became a sensation)、第2節7語(her name a metaphor for urban alienation)、第3節10語(her last hour an indictment of the pitiless American city)と3節を順次重たくする漸層法の手法――並列(oarataxis)プラス漸層法(climax)で3節(clause)、これは並々ならぬ並列。
「One..., one...」「One..., two...」の表現形式でoneとone、oneとtwoの照応を生かした並列はなかなかの人気、例えば、
ですがA and B(AとB)のem.ではなく、A with B(BをもったA)のcn.から変形生成しているのがcl.の並列パターンの特別であり、格別。
One world with one dream.に文構造を与えると以下になります。
ですからOne world, one dream.はco.、cp.、cq.のHere's、This is、Ours isを省略する体言止めで生成したOne world one dream.のwith省略で生成した「体言止めプラス並列」、見かけが単純そのものですが「One..., one...」は応用タイプの並列です。
| [問14] | One country, two political systems.(一国二政治体制)とはどこの国のことか。 |
political抜きで2単語2名詞句並列のOne nation, two systems.でも通っています。
| [答] | 中国: 共産党政府が治める社会主義体制の中国の中に資本主義体制の香港あり。 |
One country, two political systemsの変形生成プロセスは以下の通り。
前置詞withを省略するところがこのタイプの並列の特色ですが、接続詞、前置詞共通の文法機能は「接続」ですから、with省略の並列は「特別」であっても「特殊」とまでは言えませんね。ですが、これから紹介しますもう1つの並列は「特殊」です。
| [問13] | 以下の英文を解釈しなさい。 |
命令文が2つで並列――1つ目Love meは「私を愛せ」、2つ目love my dogは「私の犬を愛せ」、2つで「私を愛せ、私の犬を愛せ」この並列の奥が解せなくとも文字通りの意味は解せる、ともいきませんね。そこで、
つまり「私を熱愛せよ」と解釈してよさそうですが、実はこの英文は諺で以下の解釈になるのです。
ですから「坊主憎けりゃ袈裟(けさ)まで憎い」と同趣意、ですが英語の諺は「love」ときて日本語は「憎い」と受けるのもなんですから、以下のような訳をつけておきます。
並列「A(命令文), B(命令文)」の背後にあるのは「A and B」でなく「命令文+and」構文、ここがこの並列の「特殊」――「命令文+コンマ+命令文」の表現形式を2007年12月28日当サイト上で「特殊並列構文(special parataxis)」として発表いたします。ですからLove me, love my dog.の背後にあるのはcy.。
「英語、ことわざ10選-4」のA friend in need is a friend indeed.(ことわざ: まさかのときの友が真の友)のa friend in needに再登場いただき、格言めかしく次のように言ってみましょう。
これを特殊並列構文に仕立てるとda.。
いいですね、これならA friend in need is a friend indeed.と仲よく肩を並べていける諺になれますよ。
| [問16] | 以下の文を英訳しなさい。 |
歳月人を待たず。
db.は名訳ですね。こんな英文がつくれるなら詩人ですね。ただひとつ残念なことに、このままが英語の諺なのですね。dc.のeverの普通のポジションはwaitsの前(ever waits)、否定語noとeverの相関でneverの意味になるこのeverを文末に配する大胆な手法がここでは生きています。dd.はThere is no time or tide to wait for you.のThere isを省略した形。
[答]
timeとtideは頭韻(alliteration)、強調の座である文頭No time, no tideはnoの強調反復、No time, no tideは並列――No pain, no gain.の4つの表現テクニック「韻」「noの強調反復」「体言止め」「並列」の内、dc.で使わなかった「体言止め」を使ったのがdd.。
© 2006,2007 遠藤緯己 All rights reserved.
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