仮定法現在の「現在」が原罪? 法がわかっていないから、命令法が仮定法現在、仮定法は英文法の無法地帯

仮定法現在は誤りだらけ、むしろ誤りだけ。仮定法現在と呼んでいるものの99%は仮定法ではなく、命令法である。

仮定法現在は違「法」

仮定法現在(subjunctive present)の「原罪」を陳述する前に、まず仮定法現在の違法を告発する必要がある。(mood)に暗い世の文法学者や参考書類の著者は命令法(imperative mood)を仮定法と取り違える違「法」を犯し続けている。

問1 命令法は命令文のみで使う法か?

仮定法(subjunctive)が条件文の条件節(protasis)と帰結節(apodosis)だけで使う法ではないように、命令法も命令文に制限されるものではない。命令法を命令文に限らねばならない文法上の制約はない。

このことは(mood/mode)が本当にわかっている人なら常識的に納得できることである。

英語には以下3つの法があることになっている。

しかし現実には、学習書や授業の中では以下の2つ――「命令法」は抹殺されている。

英文法の解説書として権威になっている江川泰一郎著『英文法解説』(548ページ)に「命令法」はまったく出てこない――著者は命令法を暗殺、なぜ?

もし命令法が命令文でのみ使う法であるのなら、確かに「命令文」1つでこと足りる。しかし「命令法と命令文は同一内容なので、本書は命令法なる文法用語は使用しない」と、著者は一言ことわりを入れておくべきところ。

法(mood)に関して『英文法解説』に出てくる2つの文法用語:
直説法
仮定法
法(mood)に関して『英文法解説』に出てこない2つの文法用語:
命令法

「法」が無ければ「法」は無法地帯――「命令法」の暗殺も無「法」のしわざ。

  1. The steering committee suggested that this be done immediately.
  2. The steering committee requested that this be done immediately.
  3. The steering committee demanded that this be done immediately.
  4. The steering committee ordered that this be done immediately.

「運営委員会はこのことが直ちになされるよう提案/要請/要求/命令した」――提案(suggested) → 要請(requested) → 要求(demanded) → 命令(ordered)の順で命令度は高くなり、「やらねばならない」義務感は強くなり、ordered ではまさに「命令」。

that 節の意味内容は現実に、実際に「なされるべき/なされねばならないこと」で、それは「仮定」「仮想」上のことではない。

だから this be done immediately の be の 法(mood)は?

この問に正しく答えるのに英語教師や予備校の講師や英文法関係の学習書の著者である必要は全くない。正直者であればよい。

しかし先生も著者も文法学者も授業や本や辞書で命令法の that 節の不定詞(infinitive:ここでは be)を仮定法現在と教え続けてきたのだ。

命令法は命令文だけ、命令文以外の命令法はことごとく仮定法で仮定法現在――「提案」が「仮定」、「要請」も「仮定」、「要求」も「仮定」、「命令」でも「仮定」、ここまでバカげた間違いが、ここまでひどい違「法」がまかり通って来た根本的な原因はもちろん「法」が根本的にわかっていないことだが、ここには「原因」だけでなく、「原罪」がある、ここには誤りだけでなく偽りがある。

仮定法現在でまかり通っている慣用表現もある。

  1. Be it so.
    (それでよい。)
  2. Suffice it to say that this subjunctive-present thing is not just nonsense but also a nuisance.
    (この手の仮定法現在ってものはナンセンスなだけでなく、やっかいものだと言っておけばいいだろう。)

Be it so. = So be it. (そうあれかし)。Suffice it to say...(…と言えば十分だろう)の it は形式主語(formal subject)。

この2つの慣用表現の共通点は古い形式の命令文であること。今風なら Let it be so.、Let it suffice to say...――なんと命令文までも仮定法で仮定法現在! 大間違いは understatement、これはもう insanity ――頭、おかしい。

問2 仮定法不定詞(仮定法現在)はどこにある?

英語の仮定法って、どんな mood? のページで仮定法現在を仮定法不定詞(subjunctive infinitive)に改めた。仮定法に2タイプの命名法の文法用語が混在しているのは文法学者の頭が混乱している証拠――仮定法現在は misnomer ではないが、misunderstanding の元。

仮定法不定詞の大本は条件節(if 節)で使う用法だが、この用法が過去のものになり、「大本」がなくなった今は、さらに水増し分の命令法を抜き取った只今は英語の仮定法の cameo(名優が演じる脇役)というところ。

動詞 wish の目的語の that 節は仮定法過去と仮定法過去完了が基本、名詞 wish の中身の that 節は補語でも形式主語 it の同格語でも仮定法不定詞。

  1. My wish is/It is my wish that each one of Japanese English grammarians take responsibility for having kept alive such a pack of lies for such a long time.
    (日本の各英文法学者にこんなうそ八百をこんなにも長く保ち続けてきたことに責任を取ってもらいたいものだ。)

lest(…しないように)節も仮定法不定詞。

  1. Choose the right path to mastering English lest your endeavor come to nothing.
    (努力がむだに終わらないよう英語習得の正道を選びなさい。)

譲歩節は法の三つ揃いでいい mood。

直説法(文法レベル):
  1. Whether it is publicly or privately provided, our English education needs to be truly professional to be really efficient.
仮定法(技法レベル):
  1. Whether it be publicly or privately provided, our English education needs to be truly professional to be really efficient.
命令法(技法レベル):
  1. Our English education, be it publicly or privately provided, needs to be truly professional to be really efficient.

「英語教育は公であれ、私であれ、本当に効率的であるために本当にプロである必要がある」――仮定法不定詞と呼ぶべきものを仮定法現在と呼び、命令法であるものを仮定法と偽るのはprofessionalにあらず。

「三つ揃い」は文法プラス技法のことば「英語」の晴れ着――「女三人寄ればかしましい」と言うが、三法寄ればたくましい。

問3 仮定法不定詞(仮定法現在)は他の仮定法とどこが違う?

仮定法不定詞は他の仮定法と「本質」が違う。

今日まで生き延びた仮定法不定詞は純粋に技法レベルの仮定法――仮定法不定詞の不定詞を直説法の動詞形に代えても意味内容は不変、つまり文法レベルでは仮定法不定詞は不要。

if 節で使う仮定法不定詞は今日まで生き延びることはなかったが、技法レベルに昇格した姿で英語界を去っている。つまり、直説法の if 節(文法レベル)と長らく共存した後に out of fashion となり out of existence となった。

実際のライティングで仮定法不定詞を使うか否かは文体(style)の問題、stylist(文章に凝る人)の選択――仮定法不定詞の硬い表情と格調は、へたをすると気取り、気負いと感じられる。

それでなくとも頻度の高い if 節で直説法と仮定法不定詞を使い分け、微妙な選択を頻繁にするのは苦労と言えば、苦労。if 節は直説法一本、ストレートでいく方が肩が凝らなくていい、と凝り性の文章家も感じる時に至ったという次第。

平たく言えば、流行(style)にはやりすたりがあるように、if 節の仮定法不定詞は書き手にも読み手にも受けない時代になったということ。

『英文法解説』第10章仮定法は「仮定法現在」から始まり、以下のように始まり、例文が続く。

§167. 仮定法現在――(1) 古風な英語で
動詞の原形(Root Form)を使い,次の用法がある。

(1) if 節の条件節で 古風な英語で見られるだけで,現在では直説法を使う。

「古風な英語で見られるだけで,現在は直説法を使う」は不正確で、あいまいで、矛盾した解説。

「古風な(old-fashioned)」は not modern、not fashionable の意で、obsolete(今では用いられない)の意ではない。今 if 節で仮定法不定詞を使うなら、それが「古風な英語」――「古風な英語で見られるだけ」とは正確にはどういう意味?

「古風な英語」が「古い英語」の意味なら不正確――確かに古い英語では if 節で「現在では直説法を使う」ところが仮定法不定詞、しかし if 節が未来時制の場合は直説法を使う、だから「if 節に直説法は今風な英語で見られるだけで、古い英語では仮定法を使う」は不正確、20世紀に出版された私の愛読書のいくつかにも仮定法不定詞の if 節が出てくる―― if 節の仮定法不定詞が廃れるのは20世紀後半と私は判断する。

if 節で直説法と仮定法不定詞を使い分ける場合、著者は仮定法不定詞をライティングの視点で技法レベルで使っているので、決して「古風な英語」を書いているのではない。「古風な英語」は「文法プラス技法」の英語を長いこと文法レンズだけの片眼鏡、色メガネで見てきた文法家の古色。

「古い英語」と言っても古英語(Old English)なんてどこが英語なのかと思ってしまうような大昔の英語ではなく、現代英語に直結する「古い英語」で検証しておこう。以下は欽定訳聖書(the King James Version 1611年)のルカ福音書第12章の中の1ページ(12:18~12:48)に出てくる if 節の全て。

ルカ福音書 12:26:
If ye then be not able to do that thing which is least, why take ye thought for the rest?
(そんな小さなことさえできないのなら、なぜほかのことを気にかけるのか。)
ルカ福音書 12:28:
If then God so clothe the grass, which is to-day in the field, and to-morrow is cast into the oven; how much you, O ye of little faith?
(今日は野にあり、明日はかまどに投げ込まれる身の草を神はかくも美しく装うのであれば、ましてやあなた方はなおさらのことではないか、信仰に貧しい人々よ。)
ルカ福音書 12:38:
And if he shall come in the second watch, or come in the third watch, and find them so, blessed are those servants.
(主人が夜更けに、あるいは未明に帰ってきて、寝ずに待っていたことを知れば、幸いなるかな僕たち。)
ルカ福音書 12:39:
And this know, that if the goodman of the house had known what hour the thief would come, he would have watched, and not have suffered his house to be broken through.
(このことを知るべし、もしも家の主(あるじ)が何時に盗人が来るのかわかっていたならば、見張っていて家に押し入らせはしなかったであろう。)
ルカ福音書 12:45:
But and if that servant say in his heart, My lord delayeth his coming; and shall begin to beat the menservants and maidens, and to eat and drink, and to be drunken;
(しかしその召使いが、心の中で主人の帰りは遅れると思い、下男下女をたたき、飲み食いし、酔いだすと)

5つの if 節の内訳:

3つの仮定法不定詞
  1. If ye then be not able to do that thing which is least,
  2. If then God so clothe the grass,
  3. But and if that servant say in his heart,
2つの直説法
  1. And if he shall come in the second watch,
  2. and shall begin to beat the menservants and maidens,
仮定法過去完了
  1. And this know, that if the goodman of the house had known what hour the thief would come,

確かに古い英語では今日の英語で直説法現在であるところが仮定法不定詞――もし古い英語で直説法現在なら、be → are、clothe → clotheth、say → sayeth になるところ。

しかし直説法未来は助動詞 shall を使う直説法で、仮定法ではない。この if 節 shall は「仮定法未来の未来は?」で解説する。

温故知新と言うが、温古英語知現代英語の書として、私は欽定訳聖書を愛読している。これしきの古さはすぐに慣れる故、一読をお勧めする。

格調の高い古文調の英語を堪能したい向きには、 A. Tille 訳、M. M. Bozman 改訂の Thus Spake Zarathustra (ツァラトゥストラはかく語りき)がお薦め――ニーチェ(Nietzsche)はこの作品をドイツ語の古文で書いたため、英訳は古文訳と現代語訳がある。

if need be はイディオムの armor をまとい、今日まで生き続けた if 節仮定法不定詞の survivor ―― need は名詞で主語、if necessary(必要なら)より重々しく、強調的な if need be は「必要とあらば」。

『英文法解説』に「if need be は現在でも使われることがある。」とある。「使われることがある」は「まったく使われないわけではない」の意にとれる、あいまいで不正確でそれで知ったかぶりで権威ぶった表現。「if need be は現在でも使われる。」はあいまいでも不正確でもない記述。

しかし、if need be の正確な頻度はどうなのか?今日のインターネットの世にあってはネット検索で動かぬ証拠が瞬時に出てくる。

if need be のネット検索:
検索日:2017年9月5日
検索結果:1,780万件

10万件なら「使われることがある」、100万件なら「使われる」、1千7百80万件は「よく使われる」。

The idiom if need be is still going strong.
(イディオム if need be は今も健在。)

その折の CNN.com から2文引用する。第2文はトランプ大統領の発言。

CNN.com 2017年6月21日掲載:
Analysts say that Russia's leaders also want to convey in no uncertain terms that, after waiting for Trump to establish warmer ties, they're now ready to get more adversarial if need be.
(ロシアの指導者たちは、トランプ大統領がより友好な関係を確立するのを待った後、今や必要とあればこれまで以上に敵対する用意のあることをきっぱりと伝えたくもあるのだと専門筋は見る。)
CNN.com 2017年8月29日掲載:
So a very clear message to the North Korea leader, Kim Jong-un, that South Korea can respond in kind, if need be. (だからこれは、必要とあれば韓国は同様に応じることができるのだという、北朝鮮の指導者 キム・ジョンウンへのしごくはっきりしたメッセージなのだ。)

if 節の仮定法不定詞死すとも、if need be は死なず――文法レベルでは死すとも、技法レベルで生き続けた if need be である。

誤り VS 偽り:仮定法現在の原罪

誤り:「動詞の原形(Root Form)を使い」

訂正:「動詞の不定詞(Infinitive)を使い」

「原形」なるものは動詞に限らず、名詞にも形容詞にも、あらゆる品詞の単語にある。

『英文法解説』も他の本も辞書も「不定詞」が「原形」になっているが、この代用は誤用である。実際「不定詞」は「原形」と区別するためにある文法用語、また「不定詞」と「to 不定詞」はまったく違うことを意味する2つの文法用語で、「to 不定詞」を「不定詞」と呼んだり書いたりするのは、純然たる、ナイーブな誤り――などなどは「英語の仮定法って、どんな mood?」の「原形はどこにある?」で詳説してある。

誤りが明白になった後も訂正せず、誤りと知りつつ誤りで通すなら「誤り」は「偽り」に変質し、「罪な誤り」となる。

「命令法」なる文法用語を暗殺するためには「法」なる文法用語も闇に葬る必要がある。なぜならば「法」を出せば、英語には以下3つの法があると、最小限の解説でも「命令法」を出さざるをえなくなる。

英語の3法(mood):
直説法(indicative mood)
仮定法(subjunctive mood)
命令法(imperative mood)

学習書の中に誤りが見つかっても、著者は誠実に誤ったので不誠実に偽ったのではないと私たちは考える。

『英文法解説』の「不定詞の原形」「to 不定詞の不定詞」は著者の誠実な誤り――しかし、あきらかに仮定法の意味内容でなく命令法の意味内容であるthat 節の不定詞を「命令法」「法」を抹殺し、「法」の不整合をごまかす裏工作ありの仮定法現在は「罪な誤り」。

全員一致の「命令法」が「仮定法現在」でも、異口同音の「不定詞が原形」でも、慣用習慣の「to 不定詞が不定詞」でも、誤りは誤り―― Mistakes are mistakes are mistakes.

仮定法現在の「現在」には誰しも引っかかる。どこが、何が「現在」なのか疑問に思う――しかし、文法学者は疑問点をほったらかしにせず、最低限はっきりと問題提起する義務がある。「現在」を問題視せず、文法教育の現実を直視せず、臆病な無関心で「現在」を無視したのが「原罪」。

「誤り」は the mantle of authority に穴をあける、しかし「偽り」は権威のマントを引き裂く。裂けたマントからぼろがぽろぽろ出てくると、学者個人のマントも英語教育全体のマントも共々ぼろぼろになる。

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どだい、土台が違う

木造平屋建ての土台でビルは建てられない。3階ビルの土台に30階高層ビルは建たない。英語ができるといっても、いわば平屋の英語力と、いわば高層ビルの英語力の違いがある。

どこまで英語力を伸ばせるか。
どこまで実力が積み上がるか、
それは、土台で決まる。

世に、ネイティブ級ライティング力の超高層英語力を
現実に実現できる英語教育は、TMシステムあるのみ。

TMシステム
(The Thorough Mastering System)
英語の文法と技法の全容を実際的に深く、
深く実際的に教えきる初の英語習熟教育。

重たい英語学習を避けるなら、
どこまでも、どこまでも、どこまでも
軽い英語力でいくしかない。
深い英語学習を避けるなら、
いつまでも、いつまでも、いつまでも
理解の大不足のままでいるしかない。